診療について:猫について

混合ワクチン接種について

 あかしや動物病院では以下のワクチンを用意しています。

  • 3種混合
  • 7種混合
  • 猫白血病ウイルス(FeLV)感染症ワクチン

室内飼育と屋外飼育の違い

 室内飼育の猫には3種混合(猫汎白血球減少症、猫カリシウイルス感染症、猫ウイルス性鼻気管炎)をお勧めしています。

 屋外に行くことのある猫には7種混合(3種に加えてFeLV感染症、猫クラミジア感染症)が必要な場合があります。

FeLV

 FeLVはキャリアー(感染しているが無症状)の猫が少なくありません。したがって、FeLVのワクチンを接種する際には血液検査で感染の有無を調べる必要があります(15分ほどで結果が出ます)。

FeLV(猫白血病ウイルス)とFIV(猫免疫不全ウイルス)について

 FeLVとFIVは猫に免疫不全を引き起こし、慢性疾患や腫瘍が発病しやすい状態になるウイルスで、FIVは猫エイズとも呼ばれています。

 十勝地区においても無症状の猫の5~9%が、何らかの慢性疾患や腫瘍を持つ猫では30%前後がどちらかのウイルスに感染していることが当院のデータ(北獣会誌39, 58-61 )で明らかになっています。これらのウイルスは感染している猫との直接的な接触でのみ感染しますので、室内飼育では感染しません。屋外に出さないようにすることをお勧めします。

去勢・避妊手術

 去勢手術はオスの睾丸摘出術、避妊手術はメスの卵巣子宮全摘出術を行います。 去勢・避妊手術には子猫を生まないことはもちろん、その他にも多くのメリットがあります。

去勢・避妊手術のメリット

オス 発情にともなうスプレー行為の抑制、外に出たがることが減るためケンカや事故もちろん、睾丸の腫瘍の予防にもなります。
メス 発情にともない特徴的な激しい鳴き声からの開放、卵巣・子宮疾患と老齢になってからの乳腺腫瘍のリスクを軽減することができます。

慢性腎不全

 慢性腎不全とは長い日数をかけて少しずつ腎臓の機能が低下した状態をいいます。 原因は、老齢、様々なタイプの腎炎、細菌やウイルス感染、尿石症、腫瘍など多数あり、先天性・遺伝性の場合もあります。
腎臓の役割は、血液中の老廃物を体の外に出すこと、血圧を適正に保つこと、骨髄で血液を作るための指令を出すことですので、腎不全ではそれらの働きが低下します。

症状

 飼い主さんが気づきやすい症状は、

  • 元気・食欲の低下と痩せてくること
  • よく水を飲んで薄い尿をたくさんすること
  • 吐き気
  • 便秘
  • 時には高血圧にともなう網膜剥離により眼が見えなくなることもあります。

治療

慢性腎不全の腎臓
慢性腎不全の腎臓
全体に硬く小さくなり、
表面に凹凸が見られます。

 病院での診断は、身体検査、血液検査、尿検査、レントゲン撮影および超音波検査などにより行います。治療は、点滴、飲み薬(血管拡張薬、活性炭)、食事療法(低蛋白食)を組み合わせて行います。

 残念ながらもとの腎臓に治すことはできませんが、これらの治療により食べたり飲んだりできる状態を維持しながら病気の進行を遅らせることが可能です。生涯に渡る治療が必要ですが、状態が安定してくると1カ月に1回程度の通院になることが多いです。

リンパ腫

 リンパ腫とはリンパ球系細胞の腫瘍であり、体の多くの部位(リンパ節、脾臓、肝臓、胸腺、骨髄、腎臓、皮膚など)で発生します。

 猫ではFeLV感染と関連性があることが多いようです。

症状

 飼い主さんが気づくことのできる症状は、元気・食欲の低下とともにリンパ節(特にあごの下、肩の前、わきの下、内股、ひざの後)の脹れ、脾臓が脹れることによるお腹の膨らみです。胸の中に病変ができた場合には呼吸が苦しそうになります。

 その他には、骨髄の機能異常による貧血、胃腸のリンパ腫による吐き気・下痢があげられます。しかし、これらの症状はリンパ腫以外の病気でも見られますので、症状だけでは判断できません。

診断・治療

 診断は、脹れたリンパ節や臓器に針を刺してリンパ腫細胞を見つけること、血液検査、骨髄検査、レントゲン撮影および超音波検査により行います。

 治療は副腎皮質ホルモン(ステロイド)剤や抗癌剤を使用します。その他に、免疫力を高めるためにインターフェロンやサプリメントを使用することがあります。

 これらの治療により、完治することは難しいのですが症状を軽くすることが望めます。抗癌剤やステロイド剤を使うのかについては、飼い主さんと獣医師の十分な相談のうえで決めることになります。

6.糖尿病

 糖尿病は、膵臓からのインスリン分泌が少なくなること、または肥満、ストレス、その他の病気の影響などによってインスリンが効きにくくなることで発病します。

 インスリンは、血液中の糖を細胞内で利用するために必要です。糖尿病では、インスリンが働かないあるいは効きづらいため血液中の糖が細胞内に入れず、利用されない糖は尿中へ排泄されます。したがって、糖尿病とは栄養分が余っている状態ではなく体全体は飢餓状態です。

症状

飼い主さんが気づきやすい症状は、

  • 水をたくさん飲み尿量が多いこと
  • 食欲が増えているのにやせてくること
  • 下半身に力が入りづらいこと
  • 急に瞳が白くなること(白内障) などです。

治療

 肥満、ストレス、あるいは他の病気の影響で糖尿病になっている場合は、食餌療法、飼育環境の改善、原因となっている病気の治療、血糖降下剤内服により改善することがあります。
しかし、多くの場合は生涯にわたるインスリン注射と食事療法が主となります。

避妊手術をしていない猫は、発情ホルモンの影響で血糖のコントロールが難しいことが多いので、症状が安定している時に避妊手術をすることをお勧めします。

7.甲状腺機能亢進症

 中年齢~高齢の猫に多い代表的な内分泌疾患です。この疾患では、甲状腺が腺癌、腺腫、あるいは過形成となることにより、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されます。甲状腺ホルモンは全身の代謝を活発にするように働きます。甲状腺機能亢進症ではその働きが大きくなりすぎるために、食べているのに体重が減る、嘔吐や下痢などの消化器症状、呼吸が速くなる、心拍数が増える、高血圧、神経質になるなどの様々な症状が現れます。

  症状、触診、聴診で甲状腺機能亢進症が疑われ、血液検査で肝臓の異常値がある場合に甲状腺ホルモンを測定して診断します。
 治療方法は大きく分けて以下の3通りです。

1.食事療法

 甲状腺ホルモンの主要な原材料であるヨードを極度に制限した療法食(ヒルズ猫用Y/D)を使用します。とても効果的ですが、おやつも含めて他のものを一口でも食べてしまうと効果はありません。終生与え続ける必要があります。ドライフードと缶詰タイプがあります。

2.抗甲状腺剤の投与

 甲状腺でのホルモン合成を阻害する飲み薬を与えます。飲んでいるときだけ効いている薬ですので、終生飲み続けなければなりません。

3.甲状腺切除術

 病的な甲状腺を手術で摘出する方法です。甲状腺機能亢進症ではすでに心臓、肝臓、腎臓に負担がかかっています。したがって、術前の全身の評価と内科的治療を行ってから手術するかどうかを判断します。

 

 いずれも長所と短所がありますので、飼い主さんと相談しながら治療を行います。


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